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 クリント・イーストウッド監督、トム・ハンクスを主演の『ハドソン川の奇跡』鑑賞してきました。2009年のニューヨークで起こり、奇跡的な生還劇として世界に広く報道された航空機事故の実話です。事故がどういう風に起きたのか? どんなふうに人々が助かったのか? 映画の描写はリアルさながらのようです。
 
 離陸してから、バードストライクに逢い、エンジンが故障し、不時着するまでの208秒のシーンが随所に行ったり来たりしながら、流れるように映画が進行していきました。

 普通に考えるならば、「ハドソン川に着陸することを選らんで、それが奇跡的に成功した」という出来事で、的確な判断と迅速な対応、そしてチームワークが奇跡を生んだ! という観方になるところを、もっと見えていないところに光を当てて、クリント・イーストウッド監督が表現されていたわけです。

 全員生還で、ヒーローとなったサリー機長。ところが、ヒーローの裏舞台では、「なぜ、空港に引き返さなかったのか? 川に墜落するなんて…」という容疑者扱いを国家運輸安全委員会にされていたというのです?!
 機長のサリーも「ハドソン川に着陸して本当によかったのか?」と、自分の判断に自信がありながらも、恐ろしい夢を見てしまったり、不眠症になってしまったり…。「事実」のもっと奥深くにある「真実」が最後の最後で明かされるまで、不安な心理状態が続いていたのです。

 ザルに事実をさらさらっと通していったら、最後に「本質的なこと」が浮き彫りになっていき、見ているほうにカタルシスが起きる。

 なんか、アメリカな映画でしたが、日本だったら、それはちょっと違ったんじゃないかなとかと思うほど、何だろう、国民全体が「あなたは英雄です」と言いたがっているというか。実際、サリー機長は「英雄と呼ばないでください。ただ、訓練でやったことを実行しただけ」みたいなことを、1人でずっと唱えている。謙遜でもなく、常に冷静である姿勢がベストを生み出し、奇跡というものを生んだのかなと、私は解釈しました。

 クリスト・イーストウッド監督は、86歳! それこそミラクルですが!




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