『ゴッホとゴーギャン』のあと、映画『Genius/邦題:ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』へ。ゴッホとゴーギャンもしかり、Geniusもしかり、運命の絆で結ばれた2人の男のリアルストーリーです。

 ジュード・ロウとコリン・ファースの夢のような共演と、編集者と作家の間にどのようなやりとりが発生するのか? 興味がありました。イギリス人俳優二人がNYを舞台にしている感じも、なんだかクラシックな雰囲気を醸し出してた気もします。ちょっとダボっとしたスーツに、タイプライターの音、ソフトハット。

 ジュード・ドウ演じる作家トマスの自由な感じと、非常に理論的で冷静なコリン・ファース演じる編集者マックス。2人は正反対なのに、互いに必要で、それは世の中のためにも出逢うべくして出会った2人なのでしょう。


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 内容は、スクリブナーズ社の伝説的な名編集者マックス・パーキンズ(コリン・ファース)が無名の作家トマス・ウルフ(ジュード・ロウ)を発掘し、育て上げ、やがて決別に至る数奇な運命に焦点をしぼって描いた映画です。

 男性同士の友情の物語というのもあり、男性が多かったようにも思います。14日は、TOHOシネマズデーでもありましたが!どのレビューを読んでも、好評のものばかりでした。

 私が特に印象的だったシーンは、編集者マックスがトマスの5000ページもある原稿を、削りまくって、添削しているところです。トマスの作品ですから、添削しすぎてしまうのも、編集者マックスが作った本にもなりかねません。そこで、トマスに質問を投げかけながら、自分で削るべきところに気付かせる「育て上げる」プロセスに編集者マックスの手腕が伺えました。

 作者と読者の間にたって、ベストな形で作品を届けるために何をするべきか? 編集者マックスは絶妙なバランス感覚を備えていました。とても冷静で口数も少なく、仕事は優先させるけれど、家族と過ごすシーンも多く描写されていました。
 
 自由奔放で情熱的なトマス、父親との固執があったのか、マックスのことを父親のようにも思っていたでしょう。実際に彼が書く小説の中にも父親との影を感じさせていました。自分が心の中で求めているものに惹かれ、出逢い、魂の削りあい。しかし、とうとうマックスもトマスを突き放すときがやってきました。トマスが「相手の気持ちに立てない」ところを非難されたのです。人間関係が終わるというよりも、そこからが旅立ちだったのでしょう。トマスはひとり旅に出るのです。



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 この映画でも2人は決別してしまいましたが、マックスがずっと被っていたソフトハットを脱いだとき、それがゴーギャンで言う、「ひまわりの絵」だったのではないかと、私の中ではつながり、涙が溢れてきました。

 人生の中で、どれだけお互いの魂を削りあえるのか? そう書いてしまうと、なんだか男性っぽい描写になりますが。人を支えたり、導いたり、引き出したり…何においても、自分の力だけでは成し遂げられないのだと思います。人の力を借りるとき、お互いが引き出されているのです。自分のことは他人を通してしかわからないのです。そういう意味でも、どの瞬間においても、「絆をつくる」ということを、忘れないことが私の中で、人生で最も大切なことだと思っているのです。だからやっぱりこの映画も涙が止まりませんでした。